がん

Q. この2年間に、がんで3匹のペットを失いました。がんは、私たちの住んでいる環境に起因しているのではないかと心配しています。がんは、ペットにもよく見られるものなのでしょうか?
何かよい方法はありますか?

イヌもネコも人間と同様、がんになることはあります。また、がんになる理由も、人間とほぼ同様といえます。
がんの研究者たちは、がんについて次の3つのことを定説にしています。1つは、がんは遺伝的な要因に関係しているということ。すなわち、がんになりやすい体質は遺伝したかもしれない、ということ。
2つめにがんは環境のさまざまな因子によって影響されるということ。
3つめに、がんは免疫力が低下したときに発生しやすくなること。ネコ白血病ウイルスやネコエイズウイルスが、がんを起こす場合があります。

がんは体のあらゆる器官に発生します。はじめに発生した器官から広がったり、あるいは血管やリンパ腺を通してほかの器官に転移することもあります。

皮膚がんは最もよく見られるタイプの腫瘍です。扁平上皮がんと基底細胞腫は太陽光線によって誘発され、特に白やピンク色のイヌやネコにみられます。このがんは、耳や鼻、眼のまわりや日焼けした腹部に、集中して発生します。ペットを太陽光線から守り、毛の薄い部分(耳や鼻のまわり)に防水性の日焼け止めローションを塗ってあげましょう。
黒いイヌはメラノーマになる可能性があります。メラノーマは色素を産生するがんの一種で、非常に悪性のがんです。メラノサイトというがん細胞が口の中や皮膚に異常な勢いで増殖し、黒いかたまりを形成します。

肥満細胞腫は、ボクサーやボストンテリアでよく見られますが、高齢のイヌの皮膚にもよく発生します。肥満細胞腫が骨髄や脾臓に広がった場合は、非常に危険です。

次に最もよく見られるタイプの腫瘍は、メスのイヌやネコの乳がんです。乳腺部にしこりを発見した場合、乳がんである可能性があります。乳がんは一般に、不妊手術をしていない高齢のメスに起こります。2度目の発情が来る前に不妊手術を行うことにより、晩年の乳がんの発生率はほぼゼロになります。

次に、血液のがんがあげられます。白血病は血液と骨髄を侵すがんで、白血球に影響をおよぼします。また、ネコの場合は、ネコ白血病ウイルスに起因することもあります。

リンパ腺のがんはリンパ肉腫と呼ばれています。また、肺がんは、人間と同様に喫煙者によるたばこの煙によって起こる場合があります。コリーなどの鼻の長い犬種は、鼻がフィルターの役目をするために肺がんになる可能性が少ないのですが、そのかわり鼻腔がんになることがあります。

このほか、大型犬には、骨のがんが非常に多く見られます。また、オスのイヌは、時に腹部に停滞している精巣にがんが発生します。さらにメスは、卵巣がんにかかることがあります。
眼の周りに発生する腫瘍は比較的成長が遅いといわれますが、眼の周囲の扁平上皮がんは、致命的な場合があります。

あなたのペットをがんから守るために、以下のことをおすすめします。
・できるだけ早い時期に避妊手術、去勢手術をする。
・毛が薄く直射日光に当たりやすい部分には、防水性の日焼け止めローションを塗る。
・高品質のペットフードを与える。
・高品質で有効期限の長いビタミンを与える。砂糖やコーンシロップを与えず、人工着色料、甘味料、保存料をできるだけ避ける。
・皮膚のしこりをチェックし、体重の減少、嘔吐、下痢、異常行動、食欲や飲水量の増減、あるいは不審な出血などに注意する。
・毎年1回、獣医師の診察を受けることが非常に重要。老齢のペットは、半年に1回診察を受けるとよい。

がんの治療は、その腫瘍の種類、見つかった時の進行度によって、さまざまです。しかし、治療の成功の秘訣は、早期診断に尽きます。
腫瘍は外科的に摘出することが最良の方法であるとされています。しかし、腫瘍が散乱していたり、あるいはすでに転移をしている場合は、化学療法が用いられることが多々あります。

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