犬の代表的な病気⑤

代表的な病気

泌尿器の病気

犬の泌尿器の病気はたくさんありますが、その中で比較的多く発症し、治療期間も長く、他の泌尿器の病気にもなりやすい膀胱炎のことについてお話しましょう。
膀胱炎は感染、尿路結石、腫瘍、外傷などが原因で起こり、尿をする時にりきむ、尿に血が混じるといった症状があらわれます。このような症状を見つけたら、さっそく治療を始めなければなりません。
このような症状は、治療を開始すると数日でなくなりますが、ここで安心していけません。まだ、膀胱内には細菌が残っているのです。残っている細菌すべてがなくなるまで治療を続けなければなりません。感染を完全に治すまでには、約3週間はかかります。
完全に治らないと、膀胱結石をおこしたり、腎臓への上行感染を起こすことがあります。治療終了時および2週間後に必ず尿検査を行い、完治したかどうか確認します。犬によっては膀胱炎を起こしやすい種類もあり、再発することもしばしばあります。
総合ビタミン剤を毎日与えると、膀胱粘膜の抵抗力を強めるのに役立ちます。治療後も、排尿時のりきみ、尿をなめる、尿が臭い、尿に血が混じる、尿を漏らす、排尿回数が多いといった再発症状が出ないかどうか、じゅうぶんに注意します。多少でも尿路疾患の疑いがあるときは、検査のために病院へ連れて行きましょう。

心臓病

犬の心臓病は大まかには、3つに分けることができます。
①先天性の奇形によるもので外科手術が必要です。
②予防薬による予防をしないかぎり防げないフィラリア症。
③一番多いもので、高齢になるにしたがって多く起こり、しかも病気の進む心臓弁膜症です。
心臓病の症状は、咳、疲れやすい、動悸、失神、むくみや腹水、呼吸困難などです。

フィラリア

フィラリア症は、心臓内や肺の血管内に蚊によって伝播される虫が寄生することによって起こる病気です。
この寄生虫の成虫は、雄10~15cm、雌25~30cmのそうめんのような虫で、主に心臓の右心室内と肺動脈内に住みます。
この病気は、普通ゆっくり進行します。はじめは、あまりはっきりした症状を何もあらわしません。そのために犬が病気にかかっていても、飼い主は気がつかないことが多いのです。
病気がだんだん進行していくと、咳や疲れ、食欲不振、運動中に倒れたり、ときには、血のような色の尿をしたり、お腹に水がたまって、腹部が大きく膨らんだりします。
こうなってからでは、その治療もたいへんやっかいで、飼い主も獣医師も、そして犬自身も大変な苦労をしなければなりません。場所によっては、手術で虫を心臓や肺から取り出さなければならないことさえあります。
この病気もやはり、治療よりも予防が大切です。フィラリア症は、蚊によって伝播されますので、蚊の発生期間(地域によって差がありますが、およそ4月~12月)に、月1回予防薬を与えることによって、完全に予防することができます。
すでに夏を過ごして、蚊にさされた可能性のある犬では、薬を与える前に血液を調べ、フィラリアの仔虫であるミクロフィラリアがいないことを確かめておくことが必要です。
もしも、ミクロフィラリアがいることに気づかずに予防を始めますと、死亡するようなひどい副作用があらわれることがあるので、特に注意が必要です。

心臓弁膜症(特に僧帽弁閉鎖不全症)

この病気は、中年期から老年期に入るころに起こってくる、犬では、最も多い心臓病(フィラリア症を除いて)です。咳が出たり、疲れやすく、呼吸困難や失神を起こすことがあります。
この病気の原因はまだ不明ですが、いろいろの要因が関係しており、僧帽弁膜が変形することによって弁の閉鎖が不安全となり、血液が左心室から左心房への逆流するために、このような症状が出てくるのです。
この病気になった場合、弁を元の状態に戻すことはできませんが、注意深い聴診、レントゲン検査、心電図検査などにより、病気の進み具合を診断し、病気の程度によって、いろいろな段階の治療を行うことができます。
最も軽い段階から、血管拡張剤などの薬を与えると、病気の進行を遅らせることができます。もちろん、状態により、塩分を制限する食餌療法から、運動制限、何種類もの薬を必要とする重症例までさまざまです。この治療は、一生続けなければなりません。根気のいる治療になります。

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