犬の飼い方の方程式/犬を迎えるにあたって

1.犬の飼い方の方程式

生後日数
25日目 検便・駆虫(虫くだし)
30~40日目 離乳開始→55日ごろまでに終わらせる(ドライフードを湿らせて与えるのが理想)
親譲りの免疫のない犬や、流行地域の犬はこの時期に、犬ジステンパー・パルボウイルス感染症・伝染性肝炎・アデノウイルス2型感染症・パラインフルエンザ・コロナウイルス感染症・レプトスピラ感染症(コペンハーゲニー・カニコーラ・ヘブドマディス)などの混合ワクチン接種
2ヶ月前後 第1回上記混合ワクチン接種
検便
乳歯および咬合検査
3ヶ月前後 第2回上記混合ワクチン接種(以降毎年1回追加接種)
91日目~ 狂犬病予防注射接種
5ヶ月目 検便
6ヶ月目 検便(以降、春・夏・秋・冬年4回)
7ヶ月目 歯の検査
1歳 上記混合ワクチン追加接種(以降、毎年1回追加接種)
健康診断(以降、毎年1回以上)
7~12歳 7歳以降は、食餌に良質なたんぱく質を加える
年2回、健康診断を受ける
13歳以上 年4回、健康診断を受ける

☆フィラリアの予防処置

蚊のいる季節(地域によって差がありますが、およそ4月から12月)には、月1回の予防薬を与えます。毎年、第1回目のフィラリア予防薬を与える前に、血液検査を受けます。

☆ノミ・ダニ・条虫の予防

月1回(1年中)、予防薬(フロントラインスポットオン等)を首の後ろにつけます。

2.犬を迎えるにあたって

知っておきたい犬の体とその働き

犬を飼うにあたり、いったいどれだけの人が犬のことを研究してから飼っているでしょうか。ただかわいいから、なんとなく飼ってしまうというのがほとんどでしょう。もう少し犬のことを研究してから、飼ってみましょう。

犬に入れ歯はしないのですか?

犬は、本来肉食獣です。肉食獣の一般的特徴のひとつに、歯が、我々人間とは、大変異なっていることがあげられます。犬の口をあけてみればわかるとおり、どの歯を見ても、文字どおり犬歯で、先がとがっていて、かなり間隔をもちながら、上下全部で42本並んでいます。
肉食獣の歯はかみつぶすのではなく、肉や骨にかみつき、引き裂くのに便利にできています。引き裂いたかたまりのままで飲みこむわけです。したがって、食道もたいへん弾力に富み、唾液も多く、飲み込むのに適しています。一方これを受け入れる胃も、消化器全体から見て、人間よりずっと大きな割合をしめていて、とても酸度が強く(pH1.4~4.5)また、小腸はその割りに短く、これも肉類を消化するのに便利だといえます。 したがって、仮に歯が1本もなくなったとしても、犬が人間とともに生活していて、飼主が食べ物を飲み込める大きさにして与える限り、ほとんど消化器に対しての影響はないわけです。
これで、ことさら犬に入れ歯をしないわけがおわかりいただけたと思います。しかし、最近では、動物と人間のふれあいの中でこの問題を考えるとき、コンパニオンアニマルとしての犬たちが、ただ食事が食べられればよいというだけでなく、犬たちも我々と同じ医学の恩恵を受けられるべきであるという考えから、動物病院での犬の歯科業務の領域が広がってきつつあります。言い換えれば、歯石の除去や抜歯などが獣医歯科のほとんどであったのに比べ、歯髄内治療や義歯を使用するケースも少しずつ増えてきています。
以上、肉食獣の歯と消化器についてお話してきましたが、ここで間違えてはいけないことは、肉食獣だからといって肉だけを与えていればよいのではない、ということです。犬の栄養学はたいへん進歩していて、それにもとづいてよく考えて作られたバランスのよいドッグフード(カンヅメは除く)が市販されていますので、これを与えるのが一番よいのです。なぜなら、本来肉食獣が食べているものには、肉だけでなく内臓も骨も腸の中の未消化物も含まれているわけで、我々が食べる肉とは全く異なるからなのです。
なお、つけ加えますと、健康な犬はビタミンCを体内で合成できますので、このような意味での野菜や果物の補給も不必要になるわけです。

犬も持っているスカンクの袋(肛門嚢)

犬や猫がスカンクと同様に、お尻からくさい液を出すことは意外に知られていないようです。
犬や猫の肛門の両側には、一対の小さな袋があり、この袋を肛門嚢といいます。犬は興奮したり、危険を感じて緊張したようなときに、この肛門嚢から大変強い悪臭を伴う液体を出します。
お尻を床などにこすりつけながら前足だけで歩くような動作をしたり、お尻を気にしていらいらする時は、この袋に液がたくさんたまっていたりするものです。 細菌感染がおこり肛門嚢が化膿していたり、また袋自体がすでに破れてその周囲に膿瘍を作っているものや、ひどいものでは、その部分に穴(瘻管)ができていることさえあります。 こうなると犬は非常に痛がり、苦痛のために触らせなくなったり、咬みつくようになります。
このようになったものでは、当然手術を必要としますが、肛門嚢が破れたような例では手術もそれだけ大がかりなものとなります。
大切なのはそうならないうちに、定期的に肛門嚢をしぼってやることですが、一番よい方法は健康なときに摘出手術を受けておくことです。
この嚢は、野生時代には役立つものでしたが、人と生活を共にする場合は家を汚し、悪臭の元にもなり、しかも、悪くするとこのような病気を起こすことにもなります。
肛門嚢摘出手術を受けておけば、一生安心できますので、獣医師に相談してください。

仔犬を上手に選ぶには

犬にもたいへん大きなものから、わずか1kgたらずの小型のものまでいろいろな種類がいます。自分の家の環境に適したサイズの犬を選び、家族の了解のもとに飼いたいものです。
仔犬を選ぶときは何よりもまず健康で性質のよいものを選ぶことが一番です。できることなら時間をかけて、ゆっくり観察して選びましょう。
ペットショップをご覧になった人ならお気づきと思いますが、たくさんいる仔犬の中には、人がそばに行くとしっぽがちぎれてしまうかと思うほど振りながらよってきたり、仲間とじゃれあっている元気な仔犬もいれば、逆にいかにも神経質そうに一人ぼっちで、すみっこにいるものや元気がないもの、おとなしすぎるもの、手でも近づけようものなら歯をむき出しておこる仔犬もいるものです。これは明らかに前者の仔犬を選んだほうがよいに決まっています。後者の仔犬などがよく新聞でご覧になるように人をかむような性格になりやすいのです。
性格のよい犬でも病気がちでは、後からたいへんです。それこそ飼主泣かせの犬になりかねません。
まず、一見して活気のあることが大切です。被毛につやがなく、あちこちハゲていたり、四肢が曲がっていて歩き方もよたよたしているようでは要注意です。もし、近くでご覧になったり、実際に抱いてみる機会がありましたら、もう少し詳しく観察してください。

☆涙っぽく目やにが出ていないか。
☆目が澄んでいるか、にごっていないか。

☆犬の耳は、ふつうはよごれがないものです。
☆よごれがないか、変なにおいはしていないか。
☆ふけのようなものはないか。

☆鼻水が出ていないか、乾燥していないか。
☆くしゃみやせきをしないか。

☆口は臭くないか、歯ぐきの色はきれいなピンク色をしているか。

肛門

☆お尻がよごれていないか。
☆変なにおいはしていないか。

最近は、動物に関する良い指導書が出版されるようになりました。このような本を読んでから仔犬を選ぶほうが賢明だと思います。

犬を人間の年齢にあてはめてみますと、およそ下記の表のようになります。

犬の発育

犬と人間との年齢換算表
1ヵ月半 - 4歳 9年 - 52歳
3ヶ月 - 6歳 10年 - 56歳
6ヶ月 - 10歳 11年 - 60歳
9ヶ月 - 13歳 12年 - 64歳
1年 - 15歳 13年 - 68歳
1年半 - 20歳 14年 - 72歳
2年 - 24歳 15年 - 76歳
3年 - 28歳 16年 - 80歳
4年 - 32歳 17年 - 84歳
5年 - 36歳 18年 - 88歳
6年 - 40歳 19年 - 92歳
7年 - 44歳 20年 - 96歳
8年 - 48歳 21年 - 100歳

犬は非常に品種の多い動物で、世界で300余種に及ぶほどです。したがって品種による発育曲線も少しずつ異なり、寿命もかなり異なっています。大型犬は晩熟で、小型犬は早熟な傾向にあります。グレートデンとポメラニアンの例をとってみますと、生後初めての発情、人間でいえば思春期ですが、グレートデンでは9~12ヶ月なのに比べ、ポメラニアンは7ヵ月半から9ヶ月と同じ犬でも大きな開きがあります。また、成熟期においてもグレートデンは2年で、ポメラニアンは1年と、ここでも大きな開きがあります。

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