プレーリードッグの飼い方

北米の移民者は、犬のように鳴くことからプレーリードッグを『草原のプードル』と呼んでいた。しかし、プレーリードッグが牛の牧草を食べてしまったり、また牧場に巣穴を掘り、それに家畜が脚を引っ掛けてしまう事故が多発したため、彼らを『草原のネズミ』といって、撲滅するための大量虐殺が行われた。
20世紀初頭には50億頭も生息していたプレーリードッグが、その後数十年の間に国や州、地方自治体の撲滅運動や猟、自然破壊、病気により激減し、生育地域も、今は往時の2%ほどである。プレーリードッグの5種のうち、メキシコプレーリードッグは絶滅危惧種で、ユタプレーリードッグも絶滅の恐れがある。
シマリスは中国では松鼠とも呼ばれ、日本でも栗鼠(りっそ)、木鼠と呼ばれ、りっそが転じてリスになった。江戸時代にはシマリスは毛皮として利用され、現在はペット以外に冬眠の研究用に利用されている。

プレーリードッグの分類

いわゆるリス型げっ歯類に分類されており、地上性のものと樹上性のものとに分けられる。この仲間は形態のみによって、分類されているため、自然な系統関係を反映していない人為的な分類ともいわれている。また、ネズミ型げっ歯類の臼歯が3本であるのと比べて、各歯列あたり4~5本あるのも特徴である。

プレーリードッグの品種

シマリスには亜種の体色が濃いチョウセンシマリスと、体色が薄いチュウゴクシマリスがみられるが、朝鮮半島からの輸入は最近禁止されたので、チュウゴクシマリスが多くなってきている。なお、北海道にはエゾシマリスという種類が生息する。  プレーリードッグにはオグロプレーリードッグ、オジロプレーリードッグ、メキシコプレーリードッグ、ガニソンプレーリードッグ、ユタプレーリードッグの5種類がみられるが、本邦に輸入されるのはオグロプレーリードッグが多い。

シマリス(Tamias sibiricus)

原産地:ロシアのヨーロッパ部北部とシベリアから中国、朝鮮半島、北海道
頭胴長:約14cm、尾長:約12cm
体重:70~120g
寿命:5~10年
心拍数:320~400/分
呼吸数:40~120/分
体温:37.0~39.5℃
毛色は背中にある5本の黒茶色の縞とその間の白色部が特徴であり、目のまわりも白い。両頬には袋があり、食物を詰め込むことができる。ドングリなら左右2個ずつ入る。おおよそ9月から4月までは地下の巣で冬眠をして過ごす。なかには冬眠しないものもいる。巣はほとんど水平のチェンバーとなっており、出入り口はひとつである。昼行性で午前10時から午後4時まで活発に活動する。
食物は、ドングリや木の芽、葉、草の種子などで昆虫も食べる。また、鳥の卵や小鳥の雛も食べる。
冬眠用に種子を巣内に貯蔵するほか、地面を浅く掘り、種子を埋める分散貯蔵も行っている。分散貯蔵されたものの中で食べられなかったものは翌春芽を吹く。

オグロプレーリードッグ(Cynomys ludovicianus)

原産地:アメリカ合衆国中央部
頭胴長:28~33cm、尾長:約10cm
体重:0.8~1.5㎏
体毛:茶色がベースで黒やグレーの差し毛である。
寿命:飼育では約12年
北米の草地に集団で生活するリスの仲間で、巣は地下(深さ約5m、長さ約30m)にあり、家族単位(コテリー)で集まり、グループ(ワード)をつくる。これらのグループがいくつか集まり、町(タウン)をつくる。コテリーは雄1頭に近縁の雌数頭と子供たちで構成する。冬眠することはないが、野生では草(スゲ、カヤなどのイネ科)、根、樹皮、少量の種子と昆虫を食べる。繁殖期は早春であり、雌は地下の巣で、3~7頭程度の仔を出産する。子供は1ヵ月程度で地上に出てくる。

ヨーロッパハタリス(Spermophilus citellus)

原産地:ドイツ南東部、ポーランド南西部からトルコ、ルーマニアとウクライナ地方
体長:約22~24cm
体重:約550gまで
北部に生息するものは冬眠、南部に生息するものは夏眠をする。眼のまわりに白い縁取りがあるのが特徴である。

リチャードソンジリス(Spermophilus richardsoni)

原産地:カナダとアメリカ合衆国北部、グレート プレーンズ北部
体長:約22~25cm
体重:約250~600g
コロ二―も作るが、単独生活も好む。初夏から3月まで冬眠に入る。

ホシジリス(Spermophilus spilosoma)

原産地:メキシコ中央部からアメリカ合衆国南部
体長:約18.5~25.3cm
生息地によって毛の色の具合に変化がみられる。

ジュウサンセンジリス(Spermophilus tridecemlineatus)

原産地:テキサスからユタにかけてのグレートプレーンズ、オハイオ、カナダ南部
体長:約17~19cm
体重:約100~220g
ジリスのなかでは小さな種類である。社会性は発達していない。8,9月から3月にかけて冬眠に入る。

ミニプレーリードッグとは

ミニプレーリードッグとは、プレーリードッグの子供や小さいプレーリードッグではない。
これは俗称であり、種類名ではない。こう呼ばれているもののほとんどが、ヨーロッパハタリスであることが多い。しかしそのほかのジリスを指していることもある。

プレーリードッグの性質

シマリス/プレーリードッグ/ジリスは昼行性で、視覚に大きく頼っている。シマリスは寒冷環境、短日環境において冬眠状態になりやすい。一方、オグロプレーリードッグは冬眠しないが、やはり寒冷環境ではほとんど行動せず、眠って過ごすことが多い。ジリスの大半は冬眠、夏眠をする。また、シマリスは高温多湿の状態に弱いので熱射病、日射病になりやすい。
シマリス/プレーリードッグ/ジリスを購入する時期は、彼らが季節繁殖動物であるため、ペットショップ店頭に現れる5~6月以降が適当である。
シマリス/プレーリードッグ/ジリスは自分の身体に発生した損傷、外傷部位を自咬する傾向にある(自咬症)。 シマリスの雄は尿を飛ばす行為をよくみせる。この行為は縄張りのマーキングを意味しており、野生では木の幹に自分の尿をこすりつける。プレーリードッグは仲間に鼻面をすり合わせる行為をよくみせるが、これは仲間認識のあいさつと思われる。 プレーリードッグは飼主をみた時や警戒している時に『キャンキャン』と吠えたり、猫のように尾を立てたりする。また親愛なる人間には触ってほしいと求愛する。つまり人間を見極めることが十分にできるようで、部外者と認めた人間には咬みつこうと威嚇する。

プレーリードッグの解剖生理

筋骨格

プレーリードッグの椎骨は頚椎7、胸椎12-13、腰椎6-7である。シマリスは頚椎7、胸椎12-13、腰椎7、仙椎4、尾椎20-21である。
リス型げっ歯類は、外側咬筋が目の前を横切って尾面の上まで伸びており、ものをかじる際に下顎を前に動かす。内側咬筋は短く、顎を閉じるのに役立つ。従って咬力が強く、咬まれると非常に痛い。
シマリスの前肢の第一指は痕跡的である。指の数は前肢は4本、後肢は5本である。プレーリードッグ/ジリスは前後肢ともに5本である。
プレーリードッグは3つの肛門腺を持っている。分泌物は人間にとってほとんど匂わないので摘出する必要がない。シマリスは肛門腺は存在しない。
プレーリードッグの雌は4対の乳頭を持つ。
シマリスの尻尾の皮膚は尾椎から抜けやすい。これは捕食動物に尻尾を咬まれても逃走しやすくするためと思われる。

口腔

シマリス/プレーリードッグ/ジリスの歯式は2(1/1 0/0 2/1 3/3)で、総数22本である。切歯は常生歯で、終生成長を続ける。唇側面にのみエナメル質を持つ。第二、第三切歯および犬歯はなく、近心位の小臼歯も退行消失している。第一切歯と臼歯列との間に歯隙が発達する。
シマリス/プレーリードッグ/ジリスの切歯の表面には黄茶色の着色がみられる。これはエナメル質が作られる時に、銅などがカルシウムと一緒に取り込まれるために、色がついたようにみえる。
シマリスは頬袋を持つが、プレーリードッグ/ジリスは持たない。

消化管

プレーリードッグ、ジリスの消化管の構造は草食性にも関わらず単純である。胃は単胃で、丸い盲腸を持ち、ここで発酵を行っている。シマリスも単胃であるが、盲腸は曲玉型で小さい。

シマリスの冬眠

シマリスは冬眠の準備を9月中旬から始める。巣穴に枯れ葉と冬眠中の餌を運び始める。地下の巣穴は地上をふさいで温度を一定にする。温度が更に下がると、さらに地下深くに新たなトンネルを掘って本格的に冬眠する。雌が咲きに巣穴に入り、遅れて雄が入る。冬眠に入ると出入り口はふさがれる。冬眠中は体温を下げ(8℃以下)呼吸数も減らす。時々は目を覚まして貯えていた餌を食べ、トイレで排泄も行う。そして4~5月に覚めて巣穴から出てくる。雄が先に目を覚まし、遅れて雌が覚める。冬眠期間の平均は雄で171日、雌は204日という報告がある。

プレーリードッグの繁殖

シマリス/プレーリードッグ/ジリスは季節繁殖動物であり、4~5月頃が繁殖季節である。飼育下では、プレーリードッグは11月頃から、シマリスも12月頃から発情がみられ、3~4月頃まで続く。この時期になると攻撃的になり、生殖器も発達して大きくなる。

プレーリードッグ

性成熟は2年といわれており、早いものは秋から発情期を迎える。期間は個体によって異なるが、1週間で終わるものもいれば、2ヶ月ぐらい続くものもいる。飼育下では時期も微妙にずれる。雄はやや機嫌が悪いくらいだが、雌は豹変する。特に性成熟後の2年目以降は激しい。雄は精巣が大きくなり、陰嚢が発達する。雌の陰部もやや充血がみられてくる。また雌はケージに近づくだけで飛び掛かり、ケージ越しに威嚇する。妊娠期間は1ヵ月で、平均約5頭(1~10頭)の新生仔は生まれる。離乳期は約42日間である。

シマリス

性成熟は約1年で、冬眠しないものは12月頃から、冬眠するものは3~4月頃から発情期を迎える。一日中“キィーキィー”と鳴いて反復運動を繰り返したり、しゃっくりをするようにひくひくしたり、一点をじっとみつめたり、飼主にとって発情時の行動は異常のように見える。雄は精巣が大きくなり、陰嚢が発達する。雌の陰部も充血がみられる。性周期は14日で、発情期は3日、交尾刺激排卵という報告もあるが、これらは完全に解明されていない。発情期は食欲も低下し、毛並みも悪くなるものが多い。妊娠期間は約28~35日で、約20日を過ぎると腹部の膨らみが目立つ。平均4~5頭(1~8頭)の新生仔が生まれる。離乳期は約60日である。

雌雄鑑別

リス型げっ歯類は季節繁殖動物で繁殖季節には精巣が大きくなり、陰嚢が膨らむ。雄は肛門と生殖突起の距離が長く、雌は短い。

プレーリードッグの飼育について

シマリスのケージ

シマリスは、床面積より高さがあり上下運動のできるケージが理想的である。多くは市販されている2~3階のリス用メッシュケージを利用している(20~30×20~30×60cmが理想的)。しかし足を引っ掛けて外傷を負うという欠点がある。

シマリスの巣箱

半地上性のため、1階に巣箱を設置する。市販されている木製の巣箱でも、手製でもよい。

シマリスの餌入れ

シマリスは餌、床材を散らかして、餌の上に乗って食べる性質があるので、餌入れははめ込み式か壁掛け式が清潔である。もしくは陶製の重い物を使用し、ひっくり返さないようにする。

シマリスの水入れ

糞便による汚染を防ぎ、被毛の乾燥を保つには、給水ボトルを使って与えるのが最適である。床に置くタイプの水入れの場合、水浴びをしようとして、容器の中に入ることがあるので勧められない。

プレーリードッグ/ジリスのケージ

野生のようにトンネルが掘れるような深い水槽が理想であるが、ウサギ用ケージ、犬猫用ケージ、大きめの水槽等を使用することが多い。これらのメッシュをかじる習性により、切歯の破折や四肢の骨折等の発生が多い。また肥満になりやすいという問題点もある。床のメッシュは取り除いて床材を敷くとよい。ジリスは体が小さいので水槽で十分に飼育が可能である。水槽の天井は金網で蓋をし、底には体が隠れるくらいの床材を敷く。

プレーリードッグの巣箱

巣箱はかじっても歯の歯折が起こらない木製のものが理想である。もしくはタオルやダンボール、紙でもよいが、壊されるので消耗品として考える。

プレーリードッグの餌入れ

餌、床材を散らかして、餌の上に乗って食べる性質があるので、餌入れははめ込み式か壁掛け式が清潔である。または陶製の重い物を使用し、ひっくり返さないようにする。

プレーリードッグのの水入れ

糞便による汚染を防ぎ被毛の乾燥を保つには、給水ボトルを使って与えるのが最適である。床に置くタイプの水入れだと、容器の中に入ることがあるので勧められない。

遊び場

シマリス/プレーリードッグ/ジリスは昼行性動物のため、昼間、活動的に行動する。シマリスは特に上下運動、回転運動を好むので、高さのあるケージの中に階段、上り木、回し車頭を設置するとよい。
一方、プレーリードッグ/ジリスは地上生活動物のため、高さがあるところは本来苦手である。従って高い所に登ると事故が起きやすいので、決して登らせないように注意する。例えば、カーテンをよじ登ったり、テーブルの上で遊ぶことなどは禁忌である。彼らはもぐり込み、巣を作ることが得意なので、床材や巣材の中で遊ばせることが望ましい。最近はプレーリードッグ専用の回し車も市販されている。

歯の磨耗

歯や爪などが伸びすぎないように、小枝や板、もしくは硬い牛の骨、牛羊の蹄等を与える。

温度、湿度

【プレーリードッグ】理想温度 20.5~22℃/理想湿度 30~70% 【シマリス】理想温度 18~28℃(幼齢は20~25℃)
プレーリードッグは、温度変化があまりない場所に、ケージを置かなければならない。気温が5℃以下になると眠っている時間が多くなる。
ジリスはプレーリードッグと異なり、環境によって夏眠冬眠を行うので、夏眠冬眠させない時は温度を一定(プレーリードッグの適温)に保つ。
一方、シマリスは高温多湿が苦手であり、熱射病、日射病が致命的となる。また冬季には冬眠するものがいる。できれば冬眠の前にヒマワリ等の不飽和脂肪酸の多い餌を与え、皮下脂肪を増やすとよい。

トイレ

シマリス/プレーリードッグ/ジリスは体臭がなく、排泄物もあまりにおわない。正常な糞は、乾燥していてあまりにおわないが、下痢をした時の軟便は独特のにおいを放つ。また、尿は体調にかかわらずにおう。尿のにおいを取る消臭剤入りペレットも販売されているが、完全ににおいがなくなるわけではない。トイレやケージを頻繁に掃除すれば、尿のにおいは特に気にならないと思われる。
トイレを習性するのは困難である。巣箱から離れた隅をトイレとするか、もしくは自由にさせるしかない。

掃除

ゲージ
ケージの掃除は容器(水槽もしくは金網)や床材によって異なるため、それぞれに合った掃除を行う。床材は汚れ具合により、毎日または数日おきに交換する。特に梅雨期は、なるべくこまめに水入れや
トイレ
ケージ内に設置してあるトイレは毎日掃除する。トイレ砂を取り替えるだけではなく、数日ごとに水洗いをすると清潔でよい。特にシマリスは多湿に弱いのでトイレの掃除はまめに行う。
餌入れ
水の汚れにくいボトルタイプの水入れが多用されているが、洗いにくいのが難点である。水筒などを洗うブラシを使うとよい。吸口側についているゴムの部分のぬめりもきちんと取る。手間はかかるが、熱湯消毒するとよい。

プレーリードッグの餌について

野生のシマリスは雑食性、プレーリードッグ、ジリスは限りなく草食の近い雑食性である。地域によってさまざまな食餌をしている。シマリスはハムスターと同一のペレットが市販されているが、タンパク質をやや多く必要とする雑食性である。
彼らの食餌は、下記の要素のものから成り立っていると考えられている。間違った餌による疾病もあるため、栄養のバランスがとれたメニューを考える。

シマリス
◎種子類
◎リス用ペレット
◎野菜、野草、干し草
◎動物性タンパク質
○その他
◎プレーリードッグ/ジリス
◎干し草
◎野菜、野草
◎草食動物用ペレット、プレーリードッグ用ペレット
○種子類
○動物性タンパク質(できる限り少量)
○その他

種子類

理想は低脂肪の種子、例えばハト餌であるトウモロコシ、コムギ、アサノミなどであり、そのほかに鳥用混合餌であるヒエ、アワ、キビ、カナリアシードなどもよい。特にシマリスは種子を好むように思われているが、種子類も種類によって栄養価が異なる。高脂肪、高カロリーのヒマワリ、ピーナッツ、アーモンド、ピスタチオ、クルミは控えめにする。(ピーナッツの殻などは腐ると発ガン性のアフラトキシンが発生する恐れがある)

野菜類

与えてもよい野菜
ニンジン、ブロッコリー、パセリ、カブの葉、チンゲンサイ、大根葉、コマツナ、サラダ菜、セロリ、みつば、カリフラワーなど
与えない方がよい野菜
じゃがいもの芽と皮、生の豆、ねぎ葱、タマネギ、にらなど

干し草

プレーリードッグ/ジリスの場合、野生ではイネ科(スゲ、カヤ)の植物を食べている。
イネ科のものと比べてマメ科のアルファルファはタンパク質が多いので、大量に与えないように注意する。
マメ科 アルファルファなど
イネ科 チモシーなど

野草

与えてもよい野草
タンポポの葉、ノコギリソウ、ヒレハリソウ、ハコベ、クローバー、フキタンポポ、ペンペングサ、アルファルファ、オーチャードグラス、イタリアングラスなど
中毒を起こす可能性がある植物
アサガオ、アジサイ、ウルシ、オシロイバナ、オトギリソウ、ケシ、ゴムノキ、サツキ、サトイモ、ジギタリス、シダ、シャクナゲ、ショウブ、スイセン、スズラン、ツツジ、トリカブト、ヒヤシンス、ベゴニア、ベンジャミン、ホオズキ、ワラビなど

果物

与えてもよい果物
リンゴ、メロン、イチゴ、バナナ、パイナップルなど
与えない方がよい果物
アボガドなど

ペレット

最近はいろいろなメーカーからリス用ペレットが販売されている。メーカーによって好き嫌いがあるので、内容と好みで選択する。形状はペレット状のものからクッキーのようなものまでさまざまである。
プレーリードッグ/ジリスは、できれば草食動物(ウサギ、モルモット)用ペレットを与える。しかし、最近はプレーリードッグ専用ペレットもアメリカから輸入され始めている。その成分はタンパク質11.5~12%、脂肪1.5%、繊維40%、水分13%、カルシウム0.4~0.5%、リン0.15%、ビタミンA1200IUで、かなりの高繊維ペレットである。この成分に匹敵するものは干し草である。

タンパク質

動物性タンパク質が推奨される。例えば、ゆで卵、ドッグフード、キャットフード、フェレットフード、低塩煮干し、低塩チーズ、小動物用ミルク、ヨーグルト、虫(コオロギ、ミルワーム、スーパーワーム)、肉などがよい。

妊娠、授乳中の母親の餌

母親には、妊娠中から栄養価の高い食物をいろいろ与え、さらにカルシウムとビタミンを添加する(ヨーグルトやコマツナなど)。母親は乳をたくさん出さなくてはならないので、多くの水分を必要とする。ペレットを主食としている場合は、特に出産から離乳まで水分を切らさないように注意する。

新生児の餌

新生児の食餌は、授乳中は母親の乳で十分である。4週目頃から乳量が減り離乳期に入る。母親と一緒に餌を食べるようであれば心配ない。食べにくそうだったらペレットを砕いて与える。

給水ボトルを使って与えるスタイルが理想的である。あまり飲みすぎて下痢をするようであれば、量を控えめにする。生野菜からも水分を吸収できるので、生野菜を多く与えた場合は、水の量を減らす。

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ブラッシング

プレーリードッグやジリスの毛は、主に春と秋の年2回、冬毛から夏毛へ、また夏毛から冬毛へと変化する。シマリスは年に1回、春先から初夏にかけて生え替わる。時期や期間は個体によって異なるが、ほぼ全身の毛に変化がみられる。
プレーリードッグ/ジリスでは、ストレスを与えない程度にブラッシングをする必要がある。シマリスは保定されることを極端に嫌うので行わないほうがよい。

シャンプー

本来きれい好きで、自分で手入れを行う習性があるため、シャンプー(入浴)の必要はない。しかしシマリスは暑い時には自ら水浴びを行うことがある。

爪切り

爪のなかに血管が通っているので、その先を切る。伸びすぎると、絨毯その他に引っ掛かり折れることもある。自宅でも切れるが、暴れることがあるなど難しい面もある。
道具は人間用の爪切りもしくは小さい工作用のはさみ、抜糸はさみなどが使用できる。

砂浴び

プレーリードッグ/ジリスは、野生では砂浴びをして被毛の状態を清潔に保つ。小鳥用の焼砂、爬虫類用土、もしくはチンチラ専用の砂を用いるとよい。

注意すべき疾病

栄養性疾患

シマリス/プレーリードッグ/ジリスの飼育、特に給餌法は、栄養的に完全に解明されておらず、飼主は嗜好性だけに依存して給餌している。実際、ヒマワリを中心とする高脂肪食の餌により皮膚や内臓などの栄養性疾患が人為的に発生している。

シマリスの蛋白欠乏性脱毛
1歳未満の幼若なものの大腿部にみられる脱毛、薄毛などの皮疹が特徴で、タンパク質の欠乏によるものと考えられている。特に子供は大人と比べてやや多くのタンパク質が必要である。
プレーリードッグ/ジリスの肥満
タンパク質や脂肪が多い給餌(ヒマワリ、ドッグフード等)による、栄養性肥満がよくみられる。これにはおそらく環境(運動、温度、湿度、照明)やホルモンも関与していると推測される。現在飼育されている多くが肥満であり、さまざまな問題を引き起こしている。栄養性の脱毛、心臓疾患、高コレステロール血症のような疾患が複合してみられる。
代謝性脱毛
大人では尻尾やわき腹、四肢などに限界明瞭な脱毛がみられる。掻痒(そうよう)や炎症はなく、適切な飼育指導を行い、栄養のバランスがとれた餌に改善することにより、発毛することが多い。このような代謝性疾患と思われる症例には二次感染として真菌感染がみられることもある。これらの原因には、ホルモン的なものも関与していると考えられている。

筋骨格疾患

プレーリードッグ、ジリスの飼育、特に金網ケージをはじめとする環境が不適切である場合が多い。習性や特徴も考慮して飼育しなければならない。人為的な事故により疾病が多く発生する。

プレーリードッグ/ジリスの事故
プレーリードッグ、ジリスは、室内での放し飼いや金属メッシュケージでの飼育のために落下事故やケージの噛み癖による歯や歯周の損傷が多い。頭から落下するものは切歯を破折するものが多く、露髄がみられたものは歯髄に細菌感染を起こし、歯髄炎がみられ、長期に放置された症例では根尖病巣が発生しているものをよく見る。破折した上顎の切歯は根尖周囲の炎症病巣が鼻腔を閉鎖させるため、呼吸困難を生じたり、眼窩壁へ炎症が波及した際には眼球突出の症状がみられる。
またメッシュケージの噛み癖は、切歯に破折あるいは咬合性外傷による歯根膜炎となる。下半身から落下すると四肢の骨折や脊椎損傷による後肢の跛行がみられる。
シマリスの不正咬合
シマリスは金網ケージなどを咬むことにより歯冠に影響を与え、切歯の不正咬合を発生することが多い。硬い餌が食べられず、軟らかい餌のみを口にするようになる。定期的なカットが必要となる。

泌尿生殖器疾患

生殖器疾患の発生する頻度は少ない。一方、泌尿器系は食餌のバランスが悪いために起こる腎不全や細菌性の膀胱炎の発生が多くみられる。

膀胱炎
げっ歯目の尿色もウサギと同様で、正常でも黄色から茶褐色までさまざまな色がみられる。そのため、尿の色だけで血尿と判断できない。
プレーリードッグやジリスでは一過性の細菌性膀胱炎が好発する。特に雄では尿道閉塞が起こり、腎不全になる場合もある。 シマリスでは特に雄が陰部を木の幹に擦り付けて、尿臭でマーキングを行うため、陰茎を損傷し、その結果、尿道炎になりやすい。

皮膚疾患

シマリス/プレーリードッグ/ジリスの皮膚病は感染症が少ない。真菌感染、二次的な細菌感染以外は飼育、特に環境温度、湿度、照明などの不適切な環境が原因で発生する。特に栄養性、代謝性、内分泌性皮膚疾患の発生が多くみられる。

シマリスの尻尾皮膚脱落
シマリスの尻尾は皮下組織が乏しく、不手際な保定等で尻尾の皮膚がむけて、尾椎が露出することがある。さらに自分で噛んで悪化することもある(自咬症)。損傷部位の上皮化はみられない。
シマリスの乳腺炎
原因は乳腺への細菌感染であるが、ホルモンの失調が関連していると思われる。外陰部の腫脹もみられることが多い。
皮膚糸状菌症
脱毛、色素沈着、鱗屑などがみられる。掻痒はみられない。干し草の床材が、多くの場合感染源と考えられる。一時的に紙の床材に替えることも予防になる。
肢端性皮膚炎
不衛生、不適切な床材に起因する。細菌感染、真菌感染によって四肢端に発疹が生じる。自分で指をかじって悪化させることもある(自咬症)。
皮下膿瘍
パスツレラ等の細菌感染症である。シマリスでは特に、頬袋の膿瘍がみられる。

消化器疾患

消化器疾患には異物の摂取、腸性中毒症、寄生虫、細菌感染、肝炎などがある。特にプレーリードッグ、ジリスは盲腸内繊維発酵動物であるため食餌は高繊維でなければならない。食欲低下は不十分な繊維摂取が原因で、異常な細菌の増殖を起こすこともある。

肝疾患
プレーリードッグでは肝臓疾患の発生が多い。脂肪肝、うっ血肝、肝硬変、肝臓腫瘍等は、高脂肪、高カロリーの餌、運動不耐性の環境が主な原因であると推測される。

呼吸器疾患

感染性の呼吸器疾患はシマリスに発生が多い。原産地(朝鮮半島、中国)でシマリスを捕獲する時に行われている煙によるいぶり出しや、輸入される時の粗悪な環境によって伝染されることが考えられる。一方、ジリス、プレーリードッグは切歯から波及する鼻腔閉塞、狭窄による呼吸困難の発生が多い。

シマリスの呼吸器症状
原因は細菌、真菌、ウイルスなどと推測されている。購入してすぐの幼若なものに発生が多い。
症状は鼻水、くしゃみ、呼吸困難等であり、鼻炎、気管支炎または重症例では肺炎にまで及ぶものもいる。
連鎖球菌症
シマリスに好発する感染症である。輸入元の朝鮮半島や中国において、すでに感染している、もしくは輸入される過程において感染していると推測される。輸入されるまで、集団で飼育されているために感染しやすい。多くはストレスのかかった状態において発症する。症状は呼吸器感染、顔面浮腫、肝腫大等である。皮下織に紫斑がみられることがある。急死するものも多く、感染して発症すると致死率は高い。
副鼻腔炎
プレーリードッグ、ジリスに多くみられる。原因は細菌、真菌感染、異物の鼻腔への混入等で、切歯の歯根膜炎や破折の波及による鼻腔狭窄もみられる。症状は鼻腔閉塞、尾汁、眼球突出等であり、プレーリードッグやジリスは器用に開口呼吸ができないので空気を飲み込んで鼓脹症になる。重症例では食欲不振、下痢がみられる。

寄生虫感染

シマリス/プレーリードッグ/ジリスは野生の個体を捕獲して輸入される。従って、若齢の個体には寄生虫がみられる確立が高い。

コクシジウム
Eimeria属の感染により特に幼若なもので下痢、成長遅延がみられる。大人の場合、検便でも検出されにくく、不顕性感染となることが多い。
ハジラミ
購入したての幼若なプレーリードッグに好発する。肉眼でも確認でき、重度の寄生では脱毛、?痒がみられる。
ダニ
プレーリードッグでは、肺にPneumocoptes penroseiのダニがみられ、喀出嚥下された虫体が糞便中に発見されることがある。
 シマリスでは皮膚にRodentopus sciuriやNotoedres属のヒゼンダニがみられる。被毛ではズキニダニ科のTamiopsochirus laosenisがみられる。

ホルモン性疾患

シマリス/プレーリードッグ/ジリスは季節繁殖動物であり、繁殖季節と非繁殖季節で被毛の状態、性格、肥満度等が大きく変化する。照明、温度・湿度等が不適であると正常な体や性格の変化がみられず、また、これらの変化も病気とみなされることがある。

性格の変貌

「手乗りのシマリスが急に咬むようになった」、「プレーリードッグが暴れて触れない」等という飼主の言葉をよく聞くが、このような症状はシマリスでは7~9月と1~3月、プレーリードッグやジリスでは12~3月に多い。年末からみられるこのような行動は、どちらも発情兆候であり、1日中かん高い声をあげて鳴き続け、生殖器も発達して大きく目立つようになってくる。
特に雄のプレーリードッグやジリスは狂暴になり、飼主も手がつけられない状態になる。しかし発情が終了すると元の状態に戻る。
一方、シマリスの7~9月に起こるこうした行動は、成熟期にみられる自我意識の表れであり、縄張り意識が強くなるので性格がきつくなる。