フェレットの飼い方

現在、ペットとして飼われているフェレットは、ヨーロッパケナガイタチまたはステップケナガイタチを家畜化したものであるという説がある。約3000~5000年前のエジプトにおいて、ウサギ、ネズミ捕りなどの目的のために家畜化され、今日に至っている。こうしたフェレットの様子は、当時の壁画にも描かれている。350年のアリストテレスの「動物誌」にも記載されており、ローマの詩人オウィディウスによると、すべてのフェレットは耳から子供を出産すると記されている。
ヨーロッパには、10~12世紀にかけて十字軍が普及させたと伝えられている。当時、貧困層には食料確保のための狩猟手段として、裕福な女性には趣味として扱われていた。フェレットは、この頃から家庭内でペットとして飼われており、鎖やハーネスをつないでいたと思われる“くい”が部屋の中央にみられた。その後、1857年に毛皮商人がスペインからアメリカに輸入した。
実験動物としては1926年にジステンパーの実験に用いられたのが最初であり、現在はインスルエンザ、結核、ブドウ球菌に対する感受性の研究などに使われている。1970年代からは全世界で、ネズミ退治、実験動物、愛玩用ペットとして広まっている。

フェレットの分類と品種

分類

食肉目のイタチ科の動物は、発達した臭腺を持ち、防御行動やマーキングの時に刺激臭のある揮発性液を分泌し、食性はやや雑食性の強いものが多いとされている。またイタチ科の仲間は、上質な毛皮を持つために捕獲され、種によっては絶滅が懸念されている。
Ferretという言葉はラテン語のfuronemとイタリア語のfuroreから派出しており、「泥棒」という意味がある。Putoriusは悪臭の意味であるラテン語のputorに由来している。

飼育許可証

現在フェレットの飼育が禁止されている地域は、カリフォルニア、マサチューセッツ(1996年から許可)、ハワイ、ワシントンDC、ダラス、サンアントニオ、ソルトレイクシティー、などである。また、ニューヨーク州、ニュージャージー、イリノイでは許可が必要である。
このように許可制である理由は、フェレットが子供に対して攻撃するため、危険であるということがいわれている。しかし、フェレットは過剰に反応するものに対して興味を持ち、遊びに誘うが、攻撃することはほとんどない。また狂犬病やジステンパーを媒介する動物として考えられていることもその理由である。しかし、フェレットは狂犬病に感染しても急死する場合が多く、媒介者としての役割を持たないと推測されている。そのほか、逃亡癖があり、家禽等の家畜を襲ったり、野生動物の生態系を崩す原因になるともいわれている。

品種

被毛により品種に分けられている。これはファームによっても異なる。一般に夏毛と冬毛は毛量や毛質も異なる。夏毛は短く、冬毛は長い。なかには換毛期に尻尾の毛がほとんど抜けてしまうのもいる。
フェレットの毛皮はよくみると外側からみえる長い毛と外からはみえない短い毛からできている。毛皮の全体の色は被毛と下毛それぞれの色の混じり具合によって決まるわけである。また、一本の茶色の被毛でも、先の方より根本の方が明るい色調になっている。明るくなっているところをハイライトという。

シルバーミットsilver mitts
全身は灰色から黒色で、四肢先、胸の部分が白色である。性格はやや神経質である。
セーブルsable
金色のハイライトのある艶やかな暗い茶色の被毛と白から金色の下毛を持っている。ブラック・セーブルは、金色や茶色っぽい所のない青っぽい黒の被毛と白からクリーム色の下毛を持っている。性格は好奇心が旺盛である。
 マーシャル・ファームでは鼻鏡が黒いものをセーブルの定義の一つとしている。
バタースコッチbutterscoych
体毛はクリーム色に薄い茶色がかかっている。手足、尻尾は茶褐色から黒色である。かなり人に慣れる性格である。
ホワイトファーブラックアイwhite-fur black-eye
全身白毛に黒目の模様である。昔はこの模様は高価に売買されていたが、現在は他の毛色のものとあまりかわらなくなってきた。性格は活発である。
アルビノalbino
昔の本来のフェレットの色である。赤い目とピンクの鼻を持つ白を指すが、黒っぽい目の白は、目の色が薄いこともあり、アルビノと混同されやすい。これらは実際には白からクリーム色であり、より白い方がよいフェレットとされている。性格はおとなしい。
チョコレートchocolate
暖かい暗い色からミルクチョコレートの茶色とされ、白から金色または琥珀色の下毛やハイライトがある。
シナモンcinnamon
金色から白の下毛を持ち、艶やかなやや赤っぽい茶色である。これはピンクまたは赤っぽいハイライトのある、明るい黄褐色の被毛のフェレットにも使われる。生粋の黄褐色はシャンパン色である。
シルバーsilver
全身均等に白っぽく明るい被毛を持つ傾向がある。年をとるにつれて、だんだんと暗い被毛よりも白いものの割合が高くなっていく。最終的にはこのフェレットは完全な白になってしまうこともある。

フェレットの性質

本来、夜行性のため、日中はおとなしく多くの時間を眠って過ごす(1日のうち70~75%は眠っている)。その一方で非常に遊び好きで、背中を丸めてぴょんぴょん飛び跳ねる動作をして遊びに誘う。
 盗癖、噛み癖があり、特にゴム製品やプラスチック製品が好きでそれらを飲み込んで閉塞を起こすことがある。フェレットレースがあるように、フェレットは狭い所に潜り込むのが好きで、袋、トンネル、箱などの中に入り込む。もともと狩猟能力が高いので、小動物や爬虫類などはあまり近づけないほうがよい。一般的に、空腹時には性格が荒くなる。“シュー”という音を出すが、これは欲求不満か怒りの時である。また、戦っている時や遊んでいる時もよく音を出す。
 一般的に去勢されていない雄をhob(いたずらもの)、避妊されていない雌をjill(小娘)と呼ぶ。公式には、去勢された雄をgib、避妊された雌をspriteと呼ぶが、これらの単語は広く使われているというわけではない。また幼若なフェレットは雌雄どちらともkitと呼ぶ。

フェレットの飼育について

ゲージ

水槽ケージでは換気が不十分であるため、メッシュケージを使用することが理想的である。なお、単独または複数で飼育することも可能である。

理想的なケージの広さ
55~75×45~50×15~40cmのワイヤーメッシュケースが理想である。ただし、頭が入るくらいの穴があれば、脱走できるので注意する。従ってフェレット専用ケージは網目がかなり小さいのである。
 また、ケージを咬むことによる歯および歯肉の外傷に対しても、注意しなければならない。
寝具
ハンモックやタオル等を入れてやると、フェレットはその中に体を入れて休む。専用のテントや布団等のグッズも市販されている。
餌入れ
フェレットは餌、床材を散らかして、えさの上に乗って食べる性質があるので、餌入れははめ込み式か壁掛け式が清潔である。もしくは陶製の重い物を使用し、ひっくり返さないようにする。
水入れ
糞便による汚染を防ぎ被毛の乾燥を保つには、給水ボトルを使って与えるのが最適である。床に置くタイプの水入れだと、容器の中に入ることがあるので勧められない。水分を常に摂取できるような状態でなければ、食欲も低下する傾向にある。

温度、湿度

フェレットは体表の汗腺機能が未発達で33℃以上は耐えることができないので避ける。
理想温度 15~25℃
理想湿度 45~55%

トイレ

フェレットは1日に頻繁に排泄を行なう動物である。トイレの容器は出入りしやすいように、前部が低く、後方が高いものを選ぶ。壁を高くしておくのは、フェレットが後ずさりをして排便するからである。たいていの市販のフェレット専用トイレはこのようになっている。市販の専用の砂があるが、これらは猫のように深く敷かずに、浅く敷くだけでよい。フェレットは自分の排泄物に砂をかける習性がない。またトイレを覚えるまで、あるいはその中で遊びまわらないように、前もって少し排泄物を入れておくとよい。
フェレットはいつも同じ場所で排便するのを好むため、排便のしつけは難しくない。また、きれい好きのため、寝る場所や食べる場所では排便しない。一般に、フェレットは起きてから15分以内にトイレを使うので、しつけはこの時に行なう。

掃除

ケージ
底や、すのこの下に敷いた新聞紙、ペットシーツは毎日取り替える。フェレットは排便回数が多いので、時には1日に数回の掃除が必要になる。特に夏や梅雨の時期は、湿気こもりがちになるので、なるべくこまめに取り替える。また、頻繁にできなくても、月に1回ケージ全体を水洗いして、さらに50倍のハイター(次亜塩素酸ナトリウム)で5~10分間消毒し、その後水洗いして十分に塩素を洗い流したあと、日光消毒するとよい。
トイレ
排泄の回数が多いので、室内やケージ内に設置してあるトイレは、毎日もしくは1日に数回、掃除する。トイレ砂やペットシーツを取り替えるだけでなく、水洗いも毎日すると清潔である。
餌入れ
餌入れは、餌を与える時に乾拭きする。フェレットはペレットが中心であるため、簡単に行なえる。しかし、たまには水洗いしてきちんと乾かす。
水入れ
水入れは、水の汚れにくいボトルタイプのものが多く使われているようだが、なかなか洗いにくいのが難点である。これは、水筒などを洗うブラシを使えばきれいに洗える。吸い口のほうについているゴムの部分のぬめりもきちんととること。また、受け皿タイプの水入れは、フェレットが足を入れたりして汚れやすいので、こまめに水洗いや熱湯消毒するとよい。

フェレットの餌について

栄養学的な特徴として、タンパク質と脂肪の要求量が非常に高いということがあげられる。具体的には、タンパク質が約30%以上(34~35%以上ともいわれている)、脂肪が18~30%程度はフードの中に含まれていなければならない。このような要求を満たす食餌は、やはりフェレット専用フードである。ドッグフードは低タンパク質であり、キャットフードも脂肪の含有量不足、高灰分の傾向がみられる。専用フードを新鮮な水とともにいつでも自由に食べられるようにする。
幼若のフェレット(生後6~14週齢)の場合は、水で軟らかくすると食べる。フェレットは犬猫と比べて短く単純な消化管であるため、食物は食後約3時間で消化排泄する。そのためフェレットの食餌は、高エネルギー、そして消化性の良いものが適している。また、食餌の回数も1日に9~10回与えることが好ましい。
なお、フェレットに必要な1日のカロリーは、200~300kcal/B.W.kgである。フェレットフード給餌量は、メーカーにより多少異なる。また1日の飲水量は、約75~100ml/日であり、雌より雄の方が摂取量が多い傾向にある。

タンパク質

フェレットは、動物性タンパク質、なかでも消化のよいタンパク質を必要とする。特にアルギニンとタウリンというアミノ酸を必要とし、これらは植物性タンパク質からは摂取できない。ちなみにフェレットはあまり魚を好まない。

炭水化物

フェレットは、盲腸を欠いているので、食物繊維は消化が容易でない。従って、植物繊維や植物性タンパク質を大量に与えることは適切ではない。ちなみにヨーロッパケナガイタチは獲物の胃内に含まれている食物繊維だけを摂取している。食物繊維は4%以下が理想である。
フェレットが消化できる炭水化物は、砂糖(スクロース)、乳糖(ラクトース)、果糖(フルクトース)などの単糖類にほぼ限られでんぷん以外の多糖類は消化が困難とされている。フェレットは炭水化物からのエネルギーをほとんど必要としないのが特徴である。炭水化物は腸内細菌叢を崩す原因にもなる。

脂肪

リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸が必要であり、脂肪から吸収されたエネルギーを活用する。植物性脂肪より動物性脂肪の方が嗜好性がよいと思われる。脂肪が不足すると毛が乾燥して粗剛になり掻痒がみられる。理想としては18~30%の脂肪が必要であるが、幼若なものや授乳、妊娠中の雌では約25%の脂肪が必要である。

灰分

灰分は7%以下が理想である。多すぎると尿結石の原因となる。

おやつ

フェレット専用補助栄養剤(フェレットバイト)は嗜好性が優れている。しかし、なかには軟便になる場合もある。適切なえさを与えている場合は、必ずしも必要でない。同様に、毛球症治療薬(LAXATONE 1ml or 2cm/kg,1回/週)を定期的に与えることも悪くない。これは毛球による胃腸閉塞を防ぐのに役立つだけでなく、異物を食べてしまった場合、それらを排泄する補助にもなる。
また果物や野菜も大好きである。少量であれば問題はないが、嗜好性が偏ってしまうので注意する。乳製品の乳糖は下痢を引き起こす。

給水ボトルを使って与えるのが理想的である。あまり飲みすぎて下痢をするようであれば、量を控えめにする。フェレットは水分が不足すると採食量が減少する特徴がある。

フェレットのケアについて

おもちゃ

好奇心旺盛で、何でもおもちゃにするが、ウレタンやフォームラバーのような噛み切ることのできそうなものは避ける。フェレットはそれを噛んで粉々にして破片を食べる。
また、ハンモックで遊ぶのが好きである。フェレット専門のタンパク質でできたチューインガムも市販されている。ほかに理想的なおもちゃとしてはゴルフボール、ピンポン球などの噛めない球がある。カーペットを丸めたチューブやプラスチックのパイプでできたトンネルが市販されている。

ベッド

巣で眠るのを好むのでタオル、毛布、もしくは市販のハンモックあるいは箱を用意する。

首輪

フェレット専用の首輪が市販されている。またはナイロン製の仔猫用の首輪、細くて平らな革の子犬用首輪も使える。ナイロンの首輪の場合は、それをひっかいて、ナイロン繊維を引っぱり出し、首輪をしめてしまわないように注意する。

耳掃除

フェレットは耳掃除が必要である。1ヵ月に1~2回ぐらいの掃除が必要である。フェレット専用の耳掃除用の薬もあります。

爪切り

爪の中に欠陥が通っているので、その先を切る。伸びすぎると、じゅうたんそのほかに引っかかり折れることもある。犬猫などと同様に自宅でも切れるが、暴れることがあるなど難しい面もある。
人間用の爪切りは、切るのではなく割ることになるので道具として勧められない。犬猫用の爪きりで小さいサイズのものがよい。また、専用爪きりも市販されているが、実際は犬猫用を改良したものである。
慣れないうちは、抱く係と切る係とに分かれたほうが安全である。

入浴

入浴を好まないフェレットの多くがシャワーを好む傾向がある。シャンプーはフェレットシャンプーや刺激のない犬猫用のシャンプーでもよい。フェレットの個体や季節によって毛質も異なるので、それにあったシャンプーを選択する。
多くのフェレットは入浴の直後、かなり興奮して、手足をばたつかせ、壁の端から端まで跳ねまわったりする。

注意すべき疾病

ジステンパー感染症

パラミクソウィルスが原因で、100%の死亡率ともいわれている。直接感染、媒介物、糞尿あるいは空気感染で伝播し、7~10日の潜伏期がある。症状は、発熱、食欲不振、眼脂、鼻汁、気管支炎、水泡や紅斑などの皮膚炎、Hard pad、中枢神経症状などである。感染してから潜伏期間の後に、まず結膜炎を伴う眼脂と鼻水が現れる。発熱を伴うことも多く、40℃以上にまで上がることもある。同時に皮膚が赤く、手足の裏側のパッドの部分が硬くなる。角質が増生するためである。最終的に神経症状が出て死亡する。なかには末期まで食欲低下がみられず皮膚病だけがみられるフェレットも多い。さらに末期にウィルスが神経に侵入し、神経症状を起こす場合もあるが、初期にみられることもある。
治療は困難であるため、ジステンパーワクチンによる予防が大事である。

インフルエンザ感染症

オルソミクソウィルス科の人のインフルエンザ(A、B型)が原因である。人からフェレット、フェレットから人にウィルスをうつす。症状はフェレットの場合は軽度で、膿性眼脂、鼻水、咳、くしゃみ、発熱等である。症状は1~2週間続くが、体内で抗体が作られるので、対症療法で回復することが多い。

フィラリア症

この疾患ではDirofilaria immitisが右心室や肺動脈に寄生する。症状は呼吸困難、腹水、咳、元気消失、食欲低下等である。犬の場合には、少数の寄生では無症状の場合もあるが、フェレットの場合には2~4個体のごく少数の寄生でも重症となり、血管の閉塞のため、うっ血、低酸素症、肺水腫等で死亡する。
予防(蚊のでる季節に月1回、薬を与える)がとても重要である。

耳ダニ症

ミミヒゼンダニの感染により生じる。外耳道に黒色の耳垢(じこう)が蓄積する。耳に激しいかゆみを訴え、頭を激しく振ったり、後肢で耳を引っ掻く行動がみられる。患部は充血し、耳道閉塞、耳血腫等が認められる。

皮膚糸状菌症

皮膚の免疫能の低下により、白癬菌(Trichophyton属菌)、小胞子菌(Microsporum属菌)等の感染にする。頚背部、頭頚部、四肢等に局所的に脱毛し、赤くなることもある。かゆみはあまりないが、人にうつる危険性があるので注意が必要である。

胃・十二指腸潰瘍

フェレット特有の嘔吐(よだれを出したり、“ムニャムニャ”したり、前肢で口元を気にするしぐさをしめしながら、背弯姿勢を見せる)、黒いタール状の軟便(メレナ)、食欲不振、歯ぎしり、体重減少等がみられるが無症状であることも多い。メレナは肛門付近が汚れるのみで、発見が遅れることがあるので注意する。重度の潰瘍では大量の出血がみられ、皮膚や粘膜が蒼白になり、出血性のショックを引き起こす。

腸閉塞/毛球症

フェレットは咬癖、盗癖があり、特にタオル、ボール、プラスチック切片、ゴム切片等を好み、かみ切って、誤って飲み込むことが多い。1歳以上の個体ではこうした誤飲の発生頻度は低下する。一方、毛球症は一般的に発生が見られるが、特に2歳以上の個体でよくみられる。
症状は、食欲低下、頻回な吐出する嘔吐等がみられる。重症例では元気喪失、食欲廃絶等を示し、鼓腸、ショックに移行する。 予防としては、ラキサトーンを定期的に与えることである。

肝疾患

症状は、食欲不振、元気喪失、軟便、体重減少等がみられる。重症例では黄疸や腹水も呈する。

心疾患

先天性として遺伝や奇形、後天性として栄養性、加齢性、そして感染等の要因が発生に関与していると推測される。
症状は食欲不振、体重減少、咳等がみられる。重症例では呼吸困難、胸水、腹水等を呈し、衰弱していく。

脾腫(巨脾症)

原因の特定は困難で、ウィルス感染、細菌感染、腫瘍、機能亢進、自律神経失調によるうっ血等さまざまである。そしてインスリノーマ、副腎疾患、心疾患、上部呼吸器疾患等の全身性疾患時にも併発する。
症状は触診でも腫大が確認できるくらい大きくなる。腹腔内のおおくを占めると腹部膨満、食欲不振とうがみられる。

腎不全

症状は元気喪失、食欲不振、体重減少、削痩、多飲多尿、乏尿等である。

膀胱炎/尿石症/尿道閉塞

食餌の栄養素のアンバランス、細菌感染等が、原因となる。血尿、頻尿がみられ、排尿障害を伴うことが多い。重症例では食欲不振、排尿痛等がみられ、尿道閉塞を引き起こす。尿道が閉塞した症例では尿中の血液、繊維素、砂粒状結晶、結石等が閉塞の原因となる。

副腎疾患

症状は四肢、顔面以外の左右対称性の脱毛、皮膚の菲薄化、暗色化、体重減少等である。被毛は粗になり、容易に脱毛が起きやすい。脱毛は尾に始まり、体幹部、わき腹、腹部を前方に進行し、頚部や頭部、四肢に被毛を残すのみとなる。そして、雌では外陰部が腫脹し、粘液が排泄されるのが認められる。そのほかの症状としては掻痒、多飲多尿、貧血などがあり、長期になると後躯麻痺となる。

インスリノーマ

膵臓のβ細胞の腫瘍で、高齢でよくみられる。症状は体重の減少、元気消失、異常行動(例えば、動きを止めてぼんやりと宙をみつめたり、間違って噛みついたり、口の中に何か入っているかのようにアワを吹いたり、前肢で口のあたりを掻いたりなどの動作である。)また食欲には影響しない。ほかには方向感覚消失、後肢跛行、虚弱、低血糖の際の痙攣発作、失明などが現れる。

糖尿病

症状は糖尿、多飲多尿、多食、体重減少、削痩等がみられ、ケトアシドーシスを呈すると食欲不振、元気喪失等も示す。

腫瘍

リンパ種はフェレットによくみられる腫瘍だが、若齢時に好発する。高齢のフェレットでは、しばしば膵臓や副腎の腫瘍に併発してみられる。症状は胸腔内の縦隔に腫瘍が発生すれば呼吸困難、また、脾臓に発生すれば貧血、ほかに頚部、腋下、後膝付近のリンパ節に腫大をみることもある。腹腔内に発生すれば嘔吐、下痢または腹痛をみることもある。
肥満細胞腫は一般的に良性の皮膚の腫瘍である。体表のどの部分にも発生するが、体幹部に最もよくみられる。爪先や眼瞼、尾にみられることもある。腫瘍は平滑で脱毛がみられ、斑点を伴い、可動性があり、皮下織へは及んでいない。また痒みを伴うので、噛んだり引っかいたりする。治療は早期に腫瘍を外科的に除去することである。

白内障

1歳未満の幼若時にみられるものは、遺伝性のものと考えられる。老齢時では老年性変化によって生じたり、眼の外傷によっても起きることがある。
症状はほとんどみられない。フェレットの視力は非常に弱く、視覚にはあまり頼っていない。

繁殖について

性成熟

照明時間、光照度などによって支配され、生後は初めての春かあるいは約8~12ヵ月齢時に性成熟を迎える。睾丸は繁殖期に陰嚢中に下降する。

発情期間

季節繁殖動物で、雄は雌の繁殖期である3~8月までに先んじ、12~7月までである。冬至点で発情が始まり、春分でピークを迎え、夏至ではテストストロンは最低になる。雌との時間的な差は、精子が十分に成熟するのに必要な機能的適応と考えられている。
一方、雌は長日になるにつれ発情が始まり、繁殖季節中は何度も発情する。発情徴候は外陰部が赤く腫脹し、透明の粘液の分泌がみられる。外陰部の腫脹は、発情後1ヵ月で最大を示し、交尾を行なわないと6ヵ月にわたって発情が持続するものもおり、エストロジェン中毒症になるものもみられる。

スーパーフェレットについて

  • 避妊・去勢・肛門腺を除去してある。
  • ペット用として厳選されたフェレット。
  • 獣医師の健康診断とジステンパー・ワクチン(第1回)接種済み。
  • 国際フェレット協会の証明書付き。

この証明書付きの『スーパーフェレット』は、「アメリカでフェレット専門に獣医師によって、すでに肛門腺を除去し、去勢・避妊手術をしている」というマーシャル・ファーム(Marshall Farms:MF)のフェレットのことを表す。右耳に二つの青い点があればMFから来た可能性がある。MFはWestem NewYorkにある大きな繁殖家で、ペットとしてだけでなく、実験用にもフェレットを販売している。ただし、ほかのいくつかの繁殖家も子供の耳に点々を付けているので、必ずしも入れ墨のあるフェレットがMFから来たとは限らない。

フェレットの解剖生理について

骨格

椎骨は頚椎7、胸椎15、腰椎5-6、仙椎3、尾椎18である。脊椎は非常に柔軟性があり、容易に180度の旋回が可能である。
雄では犬と同様に陰茎骨を持つが、非常に長い。
指の数は前肢が5本、後肢が5本である。
猫と異なり爪を引っ込めることはできない。

外皮・体形

体形は長い躯幹と短い肢を持つ。従って狩猟時に小さな穴にもぐり込むことが容易である。
肛門腺が発達しており興奮時には分泌物(メチルカプタン)を出す。
体臭は一対の肛門腺、肛門付近に分布するアポクリン腺、体全体に分布する皮脂腺からの分泌物が原因である。  被毛は細かな下毛と長い粗毛で覆われ、これらが体に密な絶縁層を作っている。また特に尾の毛は蜜である。そして換毛は年に2回、春と秋に抜け替わる。これらの時期は、飼われている室内の照明状態でいくらか変わる。尾はしばしば黒または赤い斑点を伴う脱毛もよく見られる。尻尾が完全にはげてしまうのは、毛の抜け替わりの周期かストレスによると思われる。去勢してない動物では繁殖期によくみられる。
汗腺が未発達であるため、その主な体熱放散調節法は浅速呼吸(panting)である。従って暑さに弱く32℃以上になると熱射病になりやすい。 雌の乳頭は4対あり、授乳しやすいように交互に位置している。

口腔

食肉目は普通4本の前臼歯を持っているが、フェレットは3本しかない。第一前臼歯は発生の過程で消失し、第三前臼歯と思われているのが第四前臼歯で、第四前臼歯で、歯式は2(3/3 1/1 3/3 1/2)で計34本である。乳歯は生後20~28日で生え、永久歯は生後50~74日で生える。
耳下腺、頬骨腺、第臼歯腺、舌下腺、下顎腺の5対の唾液腺がある。

消化管

単胃で、大量の食物を貯えることができる。
盲腸や虫垂がなく、小腸をはじめ回腸も結腸も外見上は区別が付かない管状である。小腸は約182~198cm、大腸は約10cmである。
肝臓は外側左葉、内側左葉、方形葉、外側右葉、内側右葉、尾状葉の6葉である。
膵臓は2葉で、右葉は左葉よりも長い。
脾臓の正常な大きさは年齢や健康状態によってさまざまな大きさである。

胸腔

頚が長く、従って気管も長い。気管輪は60~70個ある。
心臓は第6~8肋骨間に位置し、小さくみえる。
肺は6葉で、左側は前葉、後葉の2葉、右側は前葉、中葉、後葉、副葉の4葉に分かれる。

泌尿生殖器

右の副腎は後大静脈に付着し、左の副腎に比べ背側に位置し、肝臓の尾状葉に覆われている。左の副腎は後大静脈から3~5cm離れたところに位置している。

生理

食物を摂取してから排泄するまで、約2.5~3時間と短い。
前肢で口元をひっかいたり、舌なめずりをしたり、顎を擦ったり、後ずさりや目を細めるなどの動作はフェレット特有の嘔吐の徴候である。 犬よりもジステンパーに対して感受性が高い。
短日条件下では皮下脂肪が蓄積して体重が季節的に増加する(30~40%の変化)。そして毛並みも脂っぽく変化してくる。